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ホーム > 暮らしの役立ち情報 > 女流建築家の提案プラン > 「音」と快適につき合う
女流建築家の提案プラン 02
さまざまな音にあふれている現代社会。 騒音は人間の精神や肉体に大きな影響を与えると言われています。だからこそ、家では心地よい音環境で暮らしたいもの。 また、楽器やオーディオなどを安心して楽しむためにもプランづくりの段階から音に気を配りたいものです。 今回は、「音」と快適につき合うための家づくりを考えます。
音には聞きたい音と聞きたくない音があります。また、ある人にとっては心地よい音が、他の人にとっては不愉快だったり、同じ人でも体調や心のあり様で聞こえ方が違ったりします。

鳥の声、風や雨の音、子供の遊ぶ声、近所の人の立ち話、車の音や工場の音…。屋外の音には聞きたいものもあるけれど、聞きたくない音は騒音でしかありません。また、家の中からは、はた迷惑な音を外に出したくないけれど、中の気配が多少外に漏れるのは必ずしも悪くはないでしょう。家の中にあっては、家族なのだから互いの気配を分り合いたいし、少しぐらい我慢し合う気持ちもほしいもの。でも病気の時、仕事や勉強に集中したい時などには邪魔な音の聞こえない静かな場所も欲しい…というように、家づくりにおける音の問題は、聞こえなければよいとか、遮音すればよいというわけではありません。家をつくるとき、そんなことも家族で話しあってみたらいかがでしょう。
遮音の具体的な方法には、
<家の外への遮音>
建具の工夫…気密性の高いサッシ、2重サッシ、サッシと障子などの組み合わせで2重3重にする。複層ガラスやペアガラスを使う。
外壁の工夫…コンクリートなどの重い壁、壁の中に遮音シートを入れる、気密性の高いつくり、室内側に吸音性の高い材料を貼る。
<家の中での遮音>
遮音シートや吸音材を使う。
間取りの工夫…音の出やすい部屋(楽器をひく部屋、子供部屋など)遮音したい部屋(寝室など)を上下や隣合わせにしない。
間仕切りの工夫…気密性の高い間仕切り。間仕切りにそって家具などを造りつけ、遮音吸音を図る。
などがあります。こうした遮音対策を施しながら、それぞれの「快適な音」にこだわった家づくりの例を3つ紹介します。
(楠原 素子)
この家では、男の子2人がピアノを練習します。専門家になるためではなく趣味として習っているのですが、練習の音が近所へ漏れにくいように配慮して、2重サッシで、あるいは室内の建具とサッシで、外部に対しては2重に音をさえぎるようなつくりになっています。たとえ夏でもピアノの練習をする時は必ずこれらを閉めるので、ふだんは使わないクーラーも練習のために備えてあります。楽器の音は想像以上に大きいので、2重サッシ程度ではピアノの音がまったく漏れなくなるわけではないのですが、かなりの効果はあり、テレビやオーディオの音も外に漏れにくくなっています※。

またこの家では、自立した生活ができプライバシーも必要な高齢のご両親のために独立した部屋を作っていますが、壁にそって棚を造りつけたり、家具を並べたりして、音が伝わりにくい工夫をしています。しかし、高齢者の状況によっては安全性や精神面に配慮して、お互いの気配が分かるような軽い間仕切りとし、家族とのつながりをより濃く保てる間取りが必要な場合もあります。
専門家として練習をするため、あるいはピアノ教室などのために使う部屋に対しては、もっと完全を期した対策をとるべきでしょう。エアコンなどの配管のために壁に開けた穴も音漏れの原因になりがちなので、直接出さずに迂回した配管をするなどの対策が必要ですし、床のつくりによっては床下換気口から音が漏れることもあります。

音楽好きの人の部屋を和室にしたら、予想以上によい音が出て喜ばれました。音楽を聴くための部屋というと洋室をイメージしがちですが、和室の塗り壁と板張りの天井、畳、襖、障子などが程よい反響と吸音をするためか、「和室で聴くバロックがこんなに素晴らしいとは…」と感想を。塗り壁や枝張り天井の固さと畳、襖、障子の柔らかさがちょうどこの人の好みの音を生みだしたのでしょう。洋間の場合でも、仕上げ材にじゅうたんやカーテン、柔らかい素材の家具やクッションなどを上手に組み合わせることによって、反響と吸音のバランスを取ることができます。
この家では吹き抜けのある居間を中心に、台所、寝室、子供部屋がつながっていて、音も声も筒抜けです。吹き抜け越しに2階の親の寝室から子供部屋が見えたり、台所から2階にいる子供に声をかけたり、と賑やかに楽しく暮らしています。  とは言っても、父親が仕事をしたり、将来子供が受験勉強をしたりという場合のために、静かな部屋も確保したいという要望もありました。1階にひと部屋だけ吹き抜けにつながらない音の聞こえにくい部屋をつくり、賑やかな音と声からの避難場所にしています。


企業組合 花設計工房
1972年設立の東京パースを前身に、1988年、女性建築技術者の会を通して知り合った仲間たちにより、企業組合花設計工房設立。 以来、生活に視点を据えて、住宅設計を中心に大工さん、職人さんとのコミュニケーションを密にした現場監理を行っています。 「家は買うものではない」でメンバーの意見一致。住み手に合わせて創るものであるはずだと考えています
楠原素子(くすはらもとこ)/1942年広島県生まれ。千葉大学工学部建築学科卒業、早川正夫建築設計事務所、楠原建築設計事務所を経て、花設計工房に参画。女性建築技術者の会会員。
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