日本有数の焼物の産地として知られる栃木県の益子。陶器店が並ぶ町の中心部を抜け、車で10分ほど走った田園風景の中に、陶芸家、長倉翠子さんの窯場と住居があります。
小高い丘を登ると木立の間に見え隠れする立派な切妻の屋根。
「大きな家に見えるでしょう?それが、この家の唯一不満なところなのね。陶芸家は仕事場と住まいを分ける人が多いけれど、私は一体化しちゃったから」
長倉製陶と書かれた看板のかかる玄関を入ると、そこは大きな土間。プーンと土の匂い。足裏にも柔らかな土の感触があります。
今から9年前、長倉さんがこの家を計画したとき、強く希望したことが2つありました。
「私の焼物が映える家。そして土間がある家。陶芸家の仕事場は土間ですから、その延長上に土間の部屋があると草履のまま行き来できるでしょ。お客さんもクツのまま気軽に入れますからね。それに土間はお掃除が簡単なのよ(笑)」
土間は通常、ホコリがたちにくいように固めて三和土にしますが、長倉さんの土間は畑の土そのまま。住んでいるうちに今の硬さになったのだそうです。土の中には微生物や虫がいて活動しているらしく、いつも適度な柔らかさ。昼間の太陽の光で温度を蓄え、夜になると放出してくれるので、室内にはほんのりした温かさが残ります。
「最初はタンポポや麦が芽を出していましたよ。そのうちいつの間にか玄関横にアジアンタムが芽を出して、徐々に窓際の方へ移動していったの。気持ちのいい場所をちゃんと知っているのね」
日差しや風通しにデリケートなアジアンタムの生育ぶりが、この環境の心地よさを証明しています。 |
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| 長倉さんの作品が映える、という基本コンセプトで作られた「洋」でも「和」でもない建築。左の渡り廊下の先に窯場があります。 |
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| 長倉さんの処女作「乱」。粘土と出会ったときに、わぁーっとできた作品。「まだこれを乗りこえられない」 |
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| 住居と同じ母屋にある仕事場。緑いっぱいの庭や遠くの山々が眺められる明るい部屋です。 |
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