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著名人が語る「私のこだわり空間」
> 気軽に和のテイストを エッセイスト・ジャーナリスト 見城美枝子
エッセイスト、ジャーナリストとして、テレビなど多方面で活躍の見城美枝子さん。10年来の思いを形にした自宅リフォームでこだわった「新和風の住まい」とは。
青森大学教授、エッセイスト、ジャーナリスト。早稲田大学大学院理工学部研究科修士修了。TBSアナウンサーを経てフリーに。海外取材を含めて53カ国以上を訪問。1999年4月から同大学博士課程に在籍。主な著書に『女は悩んで美しくなる』(リヨン社)『見城美枝子の本音で! リフォーム奮闘記』(ニューハウス出版)など。
広々とした玄関ホールで。トップライトから陽射しが入り「83歳になる母は、いつもここで縫い物をしていますよ」。行灯(あんどん)風の照明はリビングと共用で、灯りをともせばモダンな空間がやわらぎます。
TBSのアナウンサー時代から、ケンケンの愛称で親しまれてきた見城美枝子さん。4児の母となり、肩書きに大学教授、厚生労働省や国土交通 省などのさまざまな委員の名が加わっても、明るい笑顔は健在です。
都内のご自宅は白いタイル外壁のモダンな外観。地上3階、地下1階に3世帯7人家族が暮らしています。海外取材、地方の大学での講義、日本全国から講演会や対談の出演依頼、と家をあけることの多い見城さんですが「仕事が終われば家へとんで帰る」という大の家好き。ちょっとした時間を見つけて掃除をし、季節ごとの行事の飾り付けをし、庭や鉢物の手入れを楽しみます。
「特に気持ちがいいのは深夜の掃除。ウィークエンド、家族がみんな寝静まったあとに、椅子を全部テーブルにあげてフローリングの床を拭きワックスがけをします。母がころばないように、滑りにくいタイプのワックスを使ってね。ときには息子たちも雑巾がけを手伝ってくれますよ」
家が大好き――をさらに助長するきっかけになったのが、新築の家を紹介するテレビ番組「アイラブリビング」のレポーター役でした。「あの家の茶室はいいな、リビングはぜひ真似したいな」と、取材から帰ってきてはわが家のリフォーム願望が広がっていったそうです。そうして構想から約10年、築17年の家をリフォームした体験を、『リフォーム奮闘記』(ニューハウス出版)にまとめた見城さん。リフォームの原動力となったのは、1「和へのこだわり」、2「求む、明るいキッチン」、3「部屋が足りない」の3つでした。
地下の茶室の円窓。ドライエリアに面 したコンクリートを50cm四方に切り、外側にサッシの押し出し窓をつけ、手前に円形にくりぬ いた壁をつけました。
玄関を入って吹き抜けを眺める。正面 は2階への階段の踊り場。写真左は、この踊り場からホールを眺めたものです。
和室床の間には、庭のこぼれ花をお母様があしらって。
地下のフローリング室。他の部屋と同様にガスの温水床暖房なので冬も快適です。正面 は京都で見つけた古い帯地。
現在、早稲田大学の博士課程で日本建築を学ぶ見城さん。もともと文学部英文科卒で、アナウンサーやエッセイストなど文科系畑を歩んできた見城さんが、建築を学ぼうと思った理由は?
「もちろん家が大好きだから。でももっと根本的には、建築を通して日本を知ろうと思ったんです。仕事で海外に行く機会が多くて、そこで素敵な住宅や教会などの建築に出会いますね。゛素敵ですね″と誉めると必ず゛ところで、あなたの国のそれはどうなっているのですか″と聞かれるわけです。そのとき、ああ自分は日本のことを知らな過ぎたと思いました」
日本のよさを知って、自分ばかりでなく次世代に伝えていかなければ…。長年そう思いつづけていた見城さんが大学院に入学したのは、一番下の子どもが小学校にあがった40代半ばのことでした。
「調査などにも表われていますが、どうも若い人たちが゛日本人でよかった″と思える国に日本はなっていない。それは日本のものより欧米のものが上なんだって、私たち大人の価値観がそうだったから。でも、考えてみれば日本人の美しい立ち居振舞いや外国人からも賞賛された礼儀作法などは、日本の住空間のなかで育まれてきたものなんですよね」
見城さんがリフォームのコンセプトにした「和へのこだわり」。その1つが、地下の機械室だった場所に4畳半の和室と茶室(写 真右下)をつくったことです。大きなボイラーと貯水タンクがあったこの場所に「茶室を!」と見城さんが言ったときには、工務店の人はびっくりしたそうです。いずれここでお茶会を催すことができるように、水屋も設えてあります。
地下につくった4畳半の和室(手前)と45cmあがった数奇屋風茶室。茶室には変形の畳を3枚入れ、余った部分に変形の床の間をつくりました。手前の和室にも半間幅の床の間があります(写 真の左手)。「炉を切ろうかどうかずいぶん悩みましたが、地下で人がいなくなる時間も多いのであきらめました」。自然光が入らない分、照明もトップライト風の演出にするなどこだわった空間です。
*
1階にあるリビングは、見城さんいわく「ファミリールーム」。絨毯敷きで床暖房、家のなかでテレビがあるのがお母様の部屋とここだけということもあり「みんなここでゴロゴロしていますよ(笑)」。そのファミリールームからダイニング、キッチンへと引き込み戸を収納すれば1つにつながる設計。床にも段差がなくフラットです。
「バリアフリーにしたかったのでできるだけフラットフロアにし、段差をつけるところははっきりつけるという考え方です。日本の建築というのは段差の美学。踏み石があって、濡れ縁、広縁があって、上がり框、畳、床の間に至るまで。それが美しいのですが、この家のように縁側のない建物ではそれができないので、その美しさを視覚的なもの、例えば横桟の障子とかで出そうと思いました」
キッチンとダイニングも障子で間仕切ります。料理が大好きで、どんなに忙しくても土のついた無農薬野菜を使って大家族の食事に気を使うという見城さん。
「わが家は和食党です。できるだけ家族7人そろって食事をしますが、そのときに台所が見えるのはイヤなんですね。障子をさっと閉めて、すっきりとした空間でいただきたいんです」
日本建築の端正で美しいテイストを取り込みながらも、安全を優先しゴロゴロできる「和み空間」。見城さんの家族への思いやりが垣間見えるようです。
ファミリールームからダイニング、キッチンを眺めたところ。キッチンとダイニングは4枚の障子(ワーロン製で汚れたら水拭きできるもの)で仕切っています。北側の天窓からは穏やかな自然光が入り、障子越しにやわらかく拡散。柱のニッチも和のテイストです。
廊下からファミリールームを眺める。「照明こそセンスの見せどころ」と見城さん。ダウンライトの照明で部屋全体をソフトに照らします。
ダイニングから玄関ホールを眺める。階段の手すりも握りやすく、かつ美しいデザイン。
写真=林 雅之
photo=Masayuki Hayashi
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