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著名人が語る「私のこだわり空間」24


「好き」に包まれて!

漫画家 楳図かずおさん

エンターテイナーとしても才能を発揮する人気の漫画家・楳図かずおさん。
彼の「好き」を集めた家は、まるでミュージアム!
キッチュ&ゴージャス、不思議な魅力は彼そのまま。
漫画家 楳図かずおさん
2階にある「一応、ここは仕事部屋」にて。赤と緑に加え、カラフルな花柄のテーブルクロスとカーペットが、独特の楳図ワールドを語ります。
街を歩いていて気に入った物があると、つい買っちゃうんです。そうした好きな物に囲まれていると、落ち着くし元気も出ますね。

「とにかく赤と緑! この家を建てるときから、インテリアは赤と緑にしようと決めていました。もともとクリスマスグッズが大好きで、気に入ったものがあると、買い集めていたんです。クリスマスグッズって、夢があるでしょう?赤と緑は、僕のテーマカラーでもあり、元気を与えてくれるんです」

トレードマークの赤と白のボーダーTシャツ姿で気軽に迎えてくれた楳図さん。エキセントリックな作品とは反対に、穏やかな口調で語ります。

「この家で特にこだわったのが、カーテンです。発色の美しさを求めたら、オランダからの取り寄せになりました。総額数百万円!一番高くつきましたけど、見事な色の美しさが気に入っています」

ファブリックに限らず、美しい色合いの赤と緑の食器や生活雑貨は、ほとんどがヨーロッパ製とか。

一方、黄色もこの家のアクセントカラーです。「本当は外壁も赤と白のボーダーにしたかったんですが、この住宅地では街並みに合わないと思いました(ちなみに、長野にある別荘の外壁は赤と白のボーダーとのこと)。そこでレモンイエローを思いついたわけですが、当時は黄色のペイントも珍しく、思い通りの色が出るか心配でした。ヘンな色に仕上がったら、窓枠などを黒で引き締めることも考えていたんです。幸いきれいな色が出たので、白と組み合わせました」

家の中にも一部黄色の品がありますが、それらは庭への持ち出し用とか。赤がチューリップの楽しさと同時に血の恐怖も併せ持つように、この家を彩る赤・緑・黄・黒・白の5色は、人間の明暗を描く楳図さんにとって、キーワード的な意味を成すのだそうです。 


シャンデリア本体は自らペイント、カーテンファブリックは輸入と、赤と緑の色に対するこだわりは相当。

  緑豊かな高尾、閑静な住宅地に建つ楳図邸。レモンイエローと白にペイントされた外観は、明るく爽やかな印象。


2階の一室は衣装部屋。やはり「赤」が圧倒的。着心地のいいラフな服装の好みは、家に求める居心地よさと同様。
まことちゃんが席に着くテーブルでは、今にもパーティが始まりそう。色鮮やかな食器類が、ダイニングルームの雰囲気を盛り上げます。

楳図さんの家は、高尾の住宅地にあります。吉祥寺の仕事場からあまり遠くない所で捜していたところ、通りがかりに見つけたとか。

「木が好きなので、自然のある所を捜していました。ここは目の前に小さな川もあって、家に戻って景色を見ると、ホッとします」

帰宅するのは、実は週に一回程度。ふだんは仕事場に寝泊まりする生活だそうです。それでも「ここに来て花に水をあげたり、好きな物に囲まれてしばらく時間を過ごすと、落ち着くし、気分転換にもなりますね」と語ります。

「吉祥寺の仕事場では、都会モード。たとえ頻繁に帰らなくても、“帰ろうと思えば帰れる家がある”ということが大切なんです。一カ所に釘付けされるのは、気分的に縛られてイヤですね。ここは、いつでも気軽に帰れる“小さな田舎”の役割を果たしているんです」

生活の場をふたつ持っているといえる楳図さんいわく「2カ所を行ったり来たり、移動することで、精神も活性化されるんです。同じ所にじっとしていると感覚も鈍って、いい発想も浮かびません」

なるほど、楳図さんがいつも冴えているのも、こうした2カ所暮らしの効用がひとつの理由のよう。



楳図さんが家のフリープラン付きの土地を購入し、この家を建てたのは約10年前。「部屋のレイアウトはなるべくシンプルにしたかったので、もともと用意されていた設計図をアレンジしてもらいました。ドアや窓なども、サンプルから自分で選んで。特に気に入っているのが、トステムの出窓です。デザインがいいですね」

壁紙もすべて楳図さんのチョイスです。「南の島のイメージで、温かさを演出したかったので」と、玄関ホールから階段廻りに使用した南国調の鳥&花柄プリントが、温かく人を迎えます。また、照明の多さも特徴。「ふだんは全部点けなくても、必要なときに必要な所に明かりがないとイヤなので、照明はたくさん取り付けました」

不在時も、防犯の意味からも必ずどこかの電気は点けてあるとか。留守がちなので、やはり防犯には気をつかっているそうです。1階ダイニングの椅子に座った大きな“まことちゃん”人形も、しかり。「外から見ると、人の気配を感じるらしいですよ」とのことですが、楳図さんが生みの親ゆえ、もしかしたら本当に、まことちゃんが動き回っているかも…?

ところで寝室については「絶対、和室に布団! いくら大きなベッドでも、境界があるでしょう?どうしても緊張しますよね。布団なら畳にころがっても安心なので、リラックスして眠れます」無理して暮らすのはイヤと語る楳図さん。

「カッコいいビルには、決して住めません。気持ちがギスギスしそうで…。僕、完全なアナログ派なんです。家も、アナログが一番!人間らしい家、生きてる家でこそ、心も安らぎ、元気になるんです」

玄関ホールから続く階段の壁紙は、楽しげなトロピカル調。額装した楳図さんの原画とともに、踊り場のピクチャーウインドウ(下)が、空間に変化を与えます。


 
玄関ホールで待ち受ける恐怖と陽気さ。入り口から人間の心理を突く演出に脱帽。   自然光を浴びて深い輝きを放つ赤の器。その表情は、美しく、そして恐ろしい…。

1936年生まれ。10代初めから漫画を描き始め、1955年に貸本漫画家としてデビュー。その後、少女雑誌に於ける恐怖漫画シリーズで地位を確立し、「まことちゃん」などのギャグ漫画で一世を風靡。類まれなる才能から、作詞・作曲も手掛け自らも歌うほか、キャスター、俳優としてもテレビや映画で活躍。CD「グワシ!まことちゃん・楳図かずおワールド」、CD「闇のアルバム」発売中。出演映画「真夜中の弥治さん喜多さん」'05年公開、「東京ゾンビ」'06年正月公開予定。
『洗礼』
(小学館文庫)
老醜を案じた母が娘に脳の移植を企てるサスペンス。吉原健一監督が映像化。
『漂流教室』
(小学館文庫)
未来に飛ばされた小学生の極限状況を描いたヒット作。大林宣彦監督が映画化。


コンピューター時代の現在も、あくまで手描きの原画にこだわり、自ら「超アナログ派」と語る楳図さん。“人間”のあらゆる姿を描く作品同様、家も、彼の人間味にあふれています。写真は、1階のリビング(手前)とダイニング。「好き」な物を集め「好き」に飾った空間は、小気味よいほどワガママで優しい…。彼の息づかいが感じられる家は、まさに“生きてる家”なのです。


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